6月29日、朝早いうちに畑に出てジャガイモを掘りおこした。休憩のため一旦帰宅して再び畑に来る。ジャガイモを入れる箱を持ち全体を見渡したときに、アキアカネの大といってよいほどの集団が、地上高3,4mのところを層状に、その層が縦に斜めに乱れるように滑空しているのに気づく。畑の上の狭い空間を埋め尽くすほどの密度であった。
それが2,3分でいなくなった。魔法にかかって消えたようにどこかに去ってしまった。あっという間の出来事だった。
アキアカネが飛び交っているのを見て、2011年の夏、どうしても行きたくていった福島の山の一つ、一切経山の山頂で見たアキアカネの集団を思い出した(いっしょに行った仲間の一人は、家族からなにもこの時期でなくても良いのと言われたとあとで聞いた)。
あのときは歩いていて邪魔になるほどのアキアカネであった。少し薄い赤色のトンボがどこから湧いてくるのか思うほど山頂で無秩序に飛び交っていた。日記には「口を開けていると飛び込んできそうなほどのトンボだ」と書いてある。
あれは2011年の7月11日。そのあと東吾妻山、安達太良山、磐梯山と行った。磐梯山に登る前の日、猪苗代町のびわ沢原森林公園で野営ができると知り行ったが、「いつもなら予約のない人はお断りしているのですが、ご覧のように空っぽです。林間学校など予約はすべてキャンセルされたので、どこででも良いですよ、泊まってください」と管理人から言われた。
がらんとしたキャンプ場に我々は一泊して次の日磐梯山に登った。山頂直下の小屋の人から今年は県外からのお客は全くないと聞いた。小屋のすぐ前にわき水があった。冷たい水がこんこんと流れ出ていた。弘法清水。我々は渇いた喉を冷気いっぱいの水で潤した。