写真家、鬼海弘雄の写真集『東京ポートレイト』(株式会社クレヴィス、2011年)を見る。印刷されたモノクロの写真を見るわれわれをその向こうから見ている写真の中の人たちは、その一枚の写真と写真家の付けた短いキャプションで、これまでの人生を余すところなく語っている。そうではなくて、その分かるところだけでわれわれはその人たちのこれまでのすべてに参加したような錯覚に陥る。この世にはこんなにいろんな人たちがいるのだからと写真は教えてくれる。これらのひとたちはこの先どのようにして一生を終えたのだろう。
キャプションを任意に広げたページから拾ってみる。
(1) 昔は、ちょっとした商売をしていたという男 2001
(2) 中国製カメラ「海鷗」を持った青年 1986
(3) 40歳になったと話す、15年前に中国製カメラをもっていたひと 2001
(歩いている人に声をかけて写真を撮ると説明にあったが、15年前のひととどのようにして再会したのだろう)
(4)「高そうなカメラだな」と呟いた男 1986
(5) 交通安全協会に勤める退職警官 1987
(6) 丹羽文雄全集をもつ男 2007
(7) 48回、救急車で運ばれたと語る男 1999
もうきりがない。
これらの人々が浅草寺の雷門の前に立って写真を撮ってもらう。写真家は上から覗く写真機でこれらの人々を撮る。
http://www.crevis.jp/publishing/publishing_014.html