我が家のサツマイモ畑の近くで、同じく畑を作っている人が「猿が入って本当に困る」と言っておられた。数ヶ月前のことである。何をしてダメだ、あいつら入るとなると必ず入る、と。畑は住宅地にあり、近くに国道も通っているところである。
何をしてもダメなら、雑草を生えたままにしてそこには何もないと思わせたらと、人工の柵はせず、コブトリソウという背丈が2m以上になる緑肥植物の種を蒔いて、サツマイモ畑の草刈りはいっさいせずにおいた。畑の周りを被って隠すという算段である。取り入れ時期までそのままにしておいた。
数日前のことである。畑を見に行った妻が「サツマイモ、大きくなっていないよ。あれでは草負けしてしまう。草を刈らないと」というので、雑草で生い茂ったサツマイモ畑を入る。
苗をさして数ヶ月経っているのに、確かに、大きいとは言いがたい。これではダメだと、草を刈り始めたが、刺した苗をよく見ると、苗の新芽が出たあとの部分が5カ所か6カ所かそれ以上、ことごとく食いちぎられたようになっている。そこから大きく育つはずの、新芽が伸びるその部分がすべて食べられていた。土の中を探ると何もできていない。400本も刺したのにすべて全滅である。丹精込めて育てると、前に書いたサツマイモである。
無念の一言である。
いろんな状況で無念をかみ殺して暮らさざるを得ない人たちに思いが馳せる。サツマイモごときというなかれ。無念の内容は違ってもその落胆に違いはない。なぜこんなことになったのか。原因は明らかなのに、目下打つ手がない。
無念というしかない。