ちょっとした手術だった


DSCN6435

家の裏に大きな古木といっていいくらいのスモモの木がある。高さは4,5mはある。枝も張っている。幹にこけが着くほどになり、実(み)は、残念ながら、往年は取り切れないほどできたのに今はあまり付かない。おまけにわずかに付いた実が食べ頃に猿にやられる。もう切ろうとなった。知り合いに頼んで切ってもらうことになった。太い幹は切断してもらって周りに積んだ。小枝は細かくして簡易の焼却炉で燃やすことにして作業を進めていた。

細い枝が小型焼却炉に入るよう、細かく折って積み上げていた。そのときだと思う。小枝のトゲが左の小指の第一関節に刺さった。鉛筆の芯の先の数ミリほどの長さのトゲが入っているのが見えた。妻は「すぐに取り出したほうがいいよ、針で簡単に出せるから」と言ったが、いつもこの程度だと膿んできたあと皮膚の奥から放り出されるように異物が出てくるのでそのままにしておいた。それが間違いだった。

トゲはいつまでも出てこず、膿がたまる度に絞り出していたがいっこうによくならない。化膿した場所は触ると痛い。痛みに我慢ができず名田庄診療所に行って取り出してもらうことにした。

診療所のN先生は、まず「困った頃に来たな、だいぶ奥に入っていそうだ」と。どこにどれくらいのものが入っているのか確かめてからでないとやたら切り裂いても取り出せないので、細い小指の第一関節の回りにゼリーを塗ってエコーでトゲのあり場所を探すところから始まった。超音波検査は電気バリカンくらいの大きさの音波を出す機器を患部に圧迫するくらい強く当て、それをそのままの圧力で動かして画像を出すので、まあけっこう痛かった。N医師と研修医の若い医師とが画面をみて、ああこれだ、と指し示す影は、そうなのかと思うくらいの不確かさだったが、「あったあった」と手術になった。

「痛くないようにお願いします」とは言ったが担当医のN先生は返事がなかった。患部に集中しているようで、それでも麻酔の注射を打つときは「ちょっと痛みますよ」と言って小指の第一関節の回りに注射を打っていく。「まだ痛いですか」「まだ痛いです」。4針目あたりで小指が棒みたいになってきて何も感じなくなった。他人の指みたいになった。

切開する皮膚の周りを赤紫色の液体で消毒して、第一関節を囲むようにカーゼをたっぷり置いて、N先生は患部をのぞき込むように顔を大接近させて鋏の先端で切り開いていく。ナイフで切開していくのかと思っていたが、そうではなくて鋏の先端で皮膚を開けていった。施術は診療所の手術室で行われているので円形のライトが10個ほど付いた光源円盤が上から小さい小指の関節を照らしている。

N先生はやる前に,これはなかなか難儀だな、などとコメントされていてちょっと心配していたが、「とれた」と声が出て,まだ奥深く入っていないときに見た黒いトゲが出てきた。

数ミリほどの黒い細い異物が出てきた。こんな小さなものがあれほど痛みを出すのか。

「出血を止めるため、しっかり自分でこの指を握っていてください」と言われ、ぎゅーっと10分以上握っていた。そのあと患部にたっぷり薬(薄茶色のペースト状のものだった)を塗って小指全体を包帯でぐるぐる巻きにして無事手術は終わった。「化膿止めの薬は要らないでしょう、痛み止めだけ出しておきます」

家に帰って報告したら妻は「最初に取っておけばそんな目に遭わなくて済んだのに」と同情だかなんだか分からないような慰めを言ってくれた。

DSCN6436



Author

早川 博信

早川 博信

 

一念発起のホームページ開設です。なぜか、プロフィールにその詳細があります。カテゴリは様々ですが、楽しんでもらえればハッピーです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>