明らかに視野狭窄なのに「様子を見ましょう」と言われても。    -緑内障治療顛末記-


今年(2017)の春頃から眼鏡がなんとなく曇っているような気がしてレンズをせっせと拭いていたが、曇り感はなくならなかった。日記をみると以下のことは413日になっている;

風呂に入って、どうしてそうしたのか覚えていないが、片方ずつ目を蓋して見たときのことである。右目を手で隠して左目だけで見る、左目を手で隠して右目だけで見る。気がついたのである、右目だけで見たときに明らかに暗くなっていることを。

白い風呂の壁が右目だけで見たとき、視野の下半分くらいが薄いねずみ色みたいになっている。びっくりした。その前日、NHKの「がってん」で緑内障のことをやっていて、その時に片方ずつで見てみましょうというようなことがあったのかどうか、それも覚えていないが、ともかくこれは明日眼科だと思った。

414

地元のO病院の眼科に行く。10時過ぎだったが、予約の人が先なので12時を回ると言われ、一旦家に帰り耕運機でサツマイモを植える予定のところを起こした。30分くらいの作業だった。 

再び病院へ。午後2時を回ってやっと診てもらえた。視野を調べる検査があった。ピンポン球を縦に半切したような大きな湾曲した白いお椀状の中に顔を入れて、目を一点に集中して動かさず、その白いお椀状の半円の壁のあらゆるところに点灯する光が見えたらスイッチを押すのである。 

左目はどこに点灯しても見えた。右目は見えないところがある。点灯した光の点が外から中央に近づくにつれて見えてくる。何点も何点も見える/見えない、を繰り返して視界の見える/見えない地図ができあがった。右目の下の左半分くらいが見えていない。右目のおよそ14くらいが見えていなかった。ショックだった。いままで全く自覚症状がなかったのである。(どうも目は健康な方がそうでない方を補うようで、それで自覚症が出ないらしい) 

眼科医の説明:眼圧も特に高くないし、眼科的には悪いところがない、考えられるのは頭(脳腫瘍とか脳溢血)なので、MRIを取ってみましょう。 

一気に心配が不気味に広がった。別の画像診断の部署に行く。頭部を頑丈なヘルメットでしっかり固定してベッドに寝かされ、耳には大きなヘッドホンを掛けて、何かあったらこれを握ってくださいと掌におさまる紡錘形の大型お知らせボタンを握らされて、トンネル状の筒の中にベッドごと入って行った。削岩機でコンクリートを掘っているような音や堅い硝子板を叩くような音が何度もした。 

20分と聞いていたが意外と早かった。眼科に戻り画像が届くまで外で待っていた。10分ほどで中に呼ばれて、「脳は別状ありません」とまず言われた。「画像診断専門の先生にも診てもらったが異常はありません」、と眼科医の先生。いっぺんに安心感が戻った。看護婦さんも良かったねと言ってくれた。再び目をのぞき込んで検査してもらうが網膜剥離の兆候はない。ともかく1週間様子を見ましょうとなった。1週間後のその日は山に行く予定があるので2週間後にしてもらう。「途中進行するようなら網膜剥離の可能性があるのですぐ来てください」と言われ帰宅した。 

病院から帰り数日間は脳はなんともないという診断で安心していたが、しかしよく考えてみれば、明らかに視野狭窄である。「様子を見ましょう」とうのは、なぜそうなっているのか分からないということでないのか。自分で次の診察日を延ばしておきながら、だんだん不安になってきて、これは別の病院に行こうと心に決めた。 

420

福井済生会病院の眼科に行く。済生会病院は以前痔瘻の手術をしてもらったところで、信頼している病院のひとつである。普通道路を走って10時過ぎに着いた。予約なし(出来ない)だったのに、あまり待たずに検査が始まった。 

検査はいろいろあった。結果は以下に。

眼圧検査;眼圧は高かった。O病院では高くなかったが、それは眼圧はいつも一定でなく低く測定されることもあるということで納得する。正常範囲が10-21mmHgに対して31であった。 

視野検査;O病院との検査結果とほぼ同じで右目の左下半分(全部ではないが)が見えない状態だった。左目の鼻に近いところもわずかだが視野が欠けていた。 

眼底検査;視神経がやられているところが写真では薄い色で出てくる。医師がここがやれやられていますねと示す部分が視野検査で見えていない部分と一致していた。見事なものである。 

視神経乳頭の形;

視神経乳頭部とは、ネットの説明を引用すれば、視神経乳頭は眼底の中心より少し鼻側によったところにあり、網膜に映った光の信号を束ねて脳に伝える視神経のつなぎ目です。視神経乳頭の中心には「へこみ(陥凹)」があり、そこから血管、視神経が出入りしており、この「へこみ」が「視神経乳頭の陥凹」と呼ばれているところです。そして、この「へこみ」が大きくなると緑内障になりやすいといわれています。“

この乳頭部はちょうど火山の噴火口のような形をしていて、その縦断面を広げると左右対称形の形になる。左と右が高く真ん中が凹んでいる形。この形には標準形があって、今回の検査結果では「へこみ」が大きく、つぶれた様な形になっていた。眼圧が高く、そうなったのだと。医用技術は本当にすごいと思った。 

視野の検査、眼底(網膜)の写真、視神経乳頭の形などから緑内障に間違いない、目薬をどれにするかまで説明が続いていたが、担当の若い医師から一応上司の専門家に相談してみますからと言われ、しばらく待合室で待っていた。 

どうぞ中へ言われ診察室に入る。「視野の見え方から脳の障害が全くないと言えないのでMRIによる脳の検査をしましょう」と。まったく!O病院ですでにMRIの検査を受けてそこでもなんともなかったのだから、まあ別状ないだろうと思ったが、それでも心配は消えなかった。 

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2回目の福井済生会病院。8時の予約でまず脳外科へ。O病院と同じ検査が始まった。同じようにガンガン、ガタガタと大きな音が続き、同じように20分ほどで終わった。脳外科の医師は脳の断面写真を何枚も見せてくれて、「脳はなんともありません」。思わず医師の両肩を軽く叩いてしまった。「ありがとうございます」。先生曰く「ピンピンで、美しく、年の割にはしわが多く、立派なものです」。なんだか儲けものをしたような気になった。 

目は結局緑内障だった。進行を止める薬を点眼することになった。眼圧を下げてこれ以上緑内障が進行しないようにするのがこの病気の治療法だが、眼圧を下げるのには数種類の方法があるみたいで、どのようにして下げるのかそれぞれ薬によるらしい。どの薬が効くのか、最初は調べるような状態らしく、1週間後にまた来てくださいと言われた。 

目薬を指すなど初めてのことなので点眼薬がうまくすべて入らない。目のまわりにこぼれる。これも練習である。 

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1週間後病院へ。眼圧は20まで下がっていた。「もう少し低い方が良いのですが、薬は効いてきたようなので、この薬を1ヶ月続けましょう。1ヶ月経ってもいまと同じくらいの眼圧だったら別のにしましょう」。

夕方風呂の前に点眼している。相変わらず100%スムーズに入らないが、顔を横にやったり上に向けたりして、こぼれたのが入るようにしている。 

70歳を過ぎてバタバタと病気が出てきた。高血圧の薬を飲み始めたのが71から。それに今度の緑内障である。そんなことを友人に話していたら、「それって、見方によってはすごいことだよ。70過ぎてから高血圧の薬を飲み始めたのだから」。妙に感心した。 

最後に緑内障に関する済生会病院の記事を引用:

慢性緑内障;

緑内障のほとんどが慢性にゆっくりと進むタイプで、このタイプは数年から十数年にかけて少しずつ視界に影が出現し徐々に拡がっていきますので自分で悪くなったという実感があまりありません。そのため、気づかないまま放置してしまう方がたくさんいらっしゃいます。「視力障害などの自覚症状がなければ緑内障ではない」とは言えず、「緑内障のほとんどは後期(末期)の病状になるまで自覚症状はありません」と言えます。視界がかなり狭くなってくる緑内障の中期の段階にいたっても、「きっと老眼のせいだろう」とか「白内障がでてきたのだろう」と自己判断し、気になっているのに仕事が忙しくてついつい先延ばしにしてはいませんか?ぜひ早めに眼科を受診してください。体の病気と同じように緑内障も早期発見早期治療が大切です。



Author

早川 博信

早川 博信

 

一念発起のホームページ開設です。なぜか、プロフィールにその詳細があります。カテゴリは様々ですが、楽しんでもらえればハッピーです。


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