2月28日、野坂岳(913.5m、敦賀市)に山岳会のMさんとKさんと小生の3人で登った。野坂岳はこれまで何度行ったことか。季節を問わずそれらはすべて素晴らしい山行だったという思いがある。
今年は雪の少ない冬だと言われ、確かに家の周りを見てもそう思うが、山に行くとそれが特によく分かる。この季節でこの雪かと、山に入ってつくづく感じた。
2月最後の日曜日、JR小浜線の粟野駅で待ち合わせる。福井からMさんとKさんが定刻の8時にやってきた。同じルートを往復するのは能がないので、つまり山屋らしくないので、どこに降りるか予め考えていた所を言い二人に承諾を貰う。黒河川に沿ってある「山」集落が下山地点となり、そこにまず車を回した。
再び粟野に戻り、野坂いこいの森キャンプ場の駐車場に車を止めて歩き始める。8時半をすこし回っていた。2月なのに全く雪がない。
それでも400mを超えたあたりで登山道に雪が出てきて、それが所々凍っているのでときどき後ろに足が滑る。Mさんは「スノシューを付けた方が楽そう」と装着するが、間もなく土だけの道が現れ、スノシューを外した。けっこう忙しいのです、快適に登ろうと思うと。
野坂の頂上までは「一の岳」、「二の岳」、「三の岳」と名付けられた小さなピークがあり、最後の少し急な「三の岳」を降りきると頂上に着く。ここまでの間、降りてくる人と何度もすれ違った。野坂岳は敦賀で一番の山でここをほとんど毎日上り下りする人がいて、出会ったの人の何人かはそのような人たちだったのだろう。
頂上にいた女性にお願いして3人は記念写真を撮る。ここでも「これが2月の野坂の頂上か」と、一同感嘆、感動というよりは雪の少なさに対する嘆きの声であった。
ほとんどすべての人が来た道を下りていくが、「同じルートをとるのはね、われわれはアマチュアではないから」と、途中追い越されて体力の衰えは確実に痛感しているのに、それだからこそ、そこは長年の山屋のプライド、同じ道を往復するアマチュアとは違うのだと、下山は別の道となる。
下山予定の登山道には数日前にカンジキを付けて歩いたのだろう跡が雪面にわずかに残っている。しかし、今日はまだ誰も通っていない。北東に向いた尾根ならどの尾根でも下山できるのだけれど、これほど雪が少ないと藪をこぐことになりそれは避けたいので、わずかに残っている足跡を追いながらの下山となった。
このルートは途中に素晴らしいブナ林がある。それが楽しみでいつも来るのだけれど、雪の季節は特にすてきで山に来られる幸せを感じるときである。
雪面にウサギの足跡が点々と付いていた。跡は雪が解けてすこし大きく広がっていたので、かのウサギが歩いてから何日か経ったあとだろう。
藤に締め付けられてヘビのように曲がって伸びたブナがあった。「巻き付いていた藤を見てかわいそうに思い、だれか藤だけとったからだね」とMさん。
Kさんがちょっと先に行ってと声をかけた。振り向くとKさんはなにやら靴の方を見ている。プラスティック製の登山靴(プラブーツ)のそこが剥がれている!眺めてわれわれ非当事者は大笑い。「それがイヤで黙っていようと思ったのに」とKさんが言う。小生は持っていた赤のビニールテープを渡す。ぐるぐる巻きの応急手当をしてなんとか再出発であった。
山からでて林道を歩いていたら鹿を思われる白骨の頭蓋骨が落ちていた。歩き始めて5時間、車を回した所まで帰ってきた。楽しい山行だった。