大学院時代の友人にOがいて、かれは見事な五七五を詠む。メールのあとに締めくくるようにしていつも五七五がある。俳句に疎い私はそこに季語があるのかないのか分からないが、それらを読んでいると、のんびりと豊かな気持ちになる。五七五の快い調子をまねしたくなった。
まねをするなら少し変わったことをと、あいうえお順に五七五を作ろうと思った。最初の五の頭だけなら面白くないので、五七五の各頭も同じ音にするとルールを決めて作り始めた。
これがとてもむずかしい。最初に真ん中の七音が決まったことがあれば、最後の五音が出てきたこともある。それらを口にすると、テーマみたいなのものが浮かんでくる。
フィクションもノンフィクションもありで、世相を入れたり、おとぼけを入れたり、昔のことを思い出したり。制限された音の中で言葉を探すのは思っていた以上に苦しい作業であったが、それだけにぴったり決まったときの快感は格別であった。「れ」は特にむずかしかった。子どもが高校のとき使っていた国語辞典で「れ」の項は11ページしかなく、そこにある言葉の組み合わせになるのだが、できた五七五は満足である。
数ヶ月、四苦八苦して完成した。
例えば、「あ」はこんなふうに。
雨が降る あちらこちらの 雨蛙
以下、「わ」まですべてそろっている。
前人未踏の大偉業であると自画自賛したくなる。前人未踏とは、「五十音五七五」で検索したら引っかからなかったからであるが。
全部眺めて、これも「Hの人生」に違いないと。
最後に少しだけですが注があります。
以下から見てください。